ー2026年7月10日ー
はじめに
私は対談場所に少し早めに着いた。すると、木村もそこに居て話しかけて来た。「津田さんとは、ほとんど面識がないので緊張します」と。とはいえ、対談はリラックスモードで進み、楽しく穏やかに、とても和んで終えた。
津田「お名前と年齢、そして所属を教えて下さい」
木村「はい。木村和美です。44歳。 “ぶどうのたね保育園”に所属しています。保育士です」
津田「木村さんは “たね”に来て何年になる?」
木村「5年目になります」
津田「その前は?」
木村「学校を卒業してからはズート保育士として働いてましたけど、保育士以外の仕事もちょっとしてみたいなと思って、保育士とは全く異なる世界に飛び込んだこともあります。ただ、やはり保育士が良くて戻りました。“たね”にです」
津田「そうなんじゃ」
木村「ですです」
津田「保育士はどんな所で? 公立?」
木村「えーとですね、最初は公立で、その後は私立。認可さんの所で」
津田「で、その後に違う仕事をやってみようと思った。それは、どんな仕事?」
木村「歯医者さんの歯科助手です」
津田「へーーえ!!」
木村「歯医者さんでは小さいお子さんも来て関われるかな? とは期待してたんですが、ほとんどなくて。
子供と関われないということに寂しさを感じてました。
歯医者さんは保育士の仕事とは全く異なって、小さいお子さんも時々は来られるんですが『歯医者さん怖い!』という先入観の状態で来るお子さんが多いから、私がイメージしていた場とは違ったんです。物足りなくもありました。
で『小さい子と関わりたいな!』って思いが歯医者さんに居れば居るほど強くなったんです。『保育士に戻りたいな。でも、大きい所は年齢的に、どうかな?』とか、いろいろと悩みながら保育園を探してたら “ぶどうのたね保育園”に辿り着きました。 小規模は初めてでした」
津田「そういうことね。で、その歯科助手は何年くらいやったの?」
木村「3年」
津田「でも、結構頑張ったんですね、3年だから」
木村「そうですか? 3年は短いような?」
津田「歯科助手で歯医者さん的なことも勉強して、それは今に活きるんじゃないの?」
木村「接遇。あれは保護者対応の時とかに役立ちますね。人と人が接するとかが多かったので、社会的マナーとかも含めて活かされたとは思ってます」
津田「歯医者さんの知識とかは?」
木村「全くなかったです。行って、日々勉強させてもらって、この年齢になって勉強するのって自分の思いとは裏腹で、なかなか覚えられず。やる気持ちはあるから頭に入ったと思うんですけど、必要なときにになかなか出て来てくれない。年齢には抗えないというのが本音です」(木村 一人で大爆笑)
津田「そうなんだ。でも、いろいろと経験をして、保育士以外の経験もしてここに来てくれたから、“ぶどうの家”としても有り難い。木村さんがいろんな知識とか経験とかを身に付けて来てくれたというのがね」
木村「本当ですか? そう言って頂けると寄り道した甲斐もあります」(二人 爆笑)
津田「寄り道なんかじゃないよ。それもキャリアじゃけん。なるほどね」(二人 大爆笑)
木村「なんか、嬉しいです」
津田「で、ここに来て、ここはどんな所?」
木村「ここは小規模で2歳児までの保育園で、 “ガッチリ外で遊ぶぞ”とか “行事に一年中終われるぞ”みたいなのがないので、私の年齢からの体力には合ってるんです。
まだ余裕があります。小規模の小さい所だから、自分のクラスはありますが、クラス外の子供ともシッカリ関われるというのは凄く良いなあ! と思います」
津田「19人だから、凄く少ないもんね。大きい所に比べたら。先生たちもそこまで多くないから」
木村「そうなんです。で、大きい保育園だと、以前働いていた保育園だと一日話しをしない先生もいるし、『あっ!! あの先生、今日は姿を見てないなあ?』っていうこともありました。
でも、ここでは全くないですね。必ずどの先生ともコミュニケーションは取りますから」
津田「チームワークも凄く良いよなあ!」
木村「ですね。サバサバっとした先生が多いので、バシッと保育のこととかでも言われるけど、それを後に引きずらないんです」
津田「必要なことは言うけれど、根に持つようなことではない」
木村「そうなんです。だから、私もやりやすいんです」
津田「仕事として確立してるよね」
木村「ですです。仕事は仕事。終わったら終わったでOFF、みたいな。私的にはとても助かってます」
津田「女性の職場はね、ネチャネチャして難しいというのは昔から言われるけど……」
木村「介護も保育も。それに看護も、オンナの職場は難しいって! 自分も経験してきて『そうだなあ!』って思うことは多々ありました。でも、そういうのがここではないんです」
津田「ないよね。多分 “ぶどうの家”全体がそうなんじゃないかな?」
木村「そうなんですか? 介護の方もそんな感じなんですね」
津田「割と人間関係も良いと思うよ」
木村「そこの悩みが無いのは大きいですね」
津田「そうそう。職場で人間関係の悩みがあると、ね!?」
木村「好きな仕事でもシンドイってなるので、この悩みが無いのは凄く有り難いです」
津田「じゃあ、ここでは保育士として思いっきり働けるなあ! っていうところで」
木村「そうですね」
津田「木村さんの目指す保育士とか、理想の保育士像というのは?」
木村「理想の保育士像? 自分も含めて、自分の子育てをして思うのが、世間でも言われるのが『日本人って自己肯定感が低い』。そういうのがあるから、やはり2歳までって凄く人としての土台になる大事な時期なので、そこに関わらせてもらってる以上、自己肯定感の高い子が育つような援助をしていけたら良いなあ! と思ってます。
自己肯定感が高い子は、自分自身が大切にされてると思うから自信を持っていろんな事に挑戦できる。考え方もポジティブ。大人になって自己肯定感が高い人って優しい人が多い気がします。思いやりもある。
私も、人として保育士としても、そんな人でありたいから、我が子にもそんな大人になって欲しいんです。ここの2年間しか関われないけれど、関わる子供たちにもそういう大人になって欲しい。そうなれば、自殺とか悲しいニュースも無くなるのかなあ? と。『あなたって存在は凄く大事なんだよ』って」
津田「ここでは愛されてるからなあ、子供たちが」
木村「そうなんですよ、本当に!」
津田「優しい子に育つもんな、愛されると」
木村「私も優しい人が好きなんで、そうであるなら私も優しい人でありたいなとは思いますね」
津田「優しいっていうことは、本当は凄く強いもんな」
木村「そうですよね。そうでなかったら優しくできない」
津田「それはもう、ここの先生たちが2年間、ガッチリと愛を与えてくれたんだから」
木村「でも時々ね、嫌そうにされることもあるんですけどね」(二人で大爆笑)
@木村は手振り身振りで子供の拒否反応を演じる。とても楽しそうに。
津田「卒園した子が訪ねてきてくれることはあるの?」
木村「時々、会いに来てくれる子がいたりしますよ。嬉しい! 『大きくなったねえ!』って言ったりして本当に嬉しいです」
津田「2歳くらいだと、なかなか記憶にないんだろうけどね?」
木村「あっ!! そうなんですよ。新しい所に馴染んじゃうと忘れてしまってね。それはそれで良いんですが、少し寂しいことは寂しいですね」
津田「まあ『大事に育ったなあ!』っていうのは絶対に残っていくと思うからね」
木村「そうだったら良いなあ!」
津田「木村さん、これからここでやっていきたいことはある?」
木村「ここで? この保育園で? 自分が動けるうちはシッカリ現役で子供とズート関わっていきたいなあ! とは思ってます」
津田「私はここが“ぶどうの家”の“たね”で、保育園があってくれるので職員さんも産んだ後に帰って来やすいということもあるから、凄く頼れる存在で有り難いなあ! っていう風に思うし、子供たちとお年寄りも自然な関わりがこれからも出来ると凄くお互いにとって良いなあ! って。
今もね、行き来を結構してて。あの時のお年寄りの表情が凄く素敵だし、子供達もね」
木村「そうですよね。核家族とかになってね、お爺ちゃんお婆ちゃんと関わる機会もなかなかね。今回、そんな触れ合う機会に恵まれて良かったです」
津田「これからもっともっと、そういう時間とかを増やしていけたら良いなあ! って思ってる」(お互い納得し合いながら爆笑)
木村「やりましょう」
津田「じゃあ、皆に聞くんだけど、私への要望とかお願いみたいなのはある?」
木村「特には無いですね」
津田「そうかー。まあ、鈴木さん(第2回登場)にね、それぞれが言ってるしね」
木村「あっ、うん、そうじゃ、うん」
@木村が鈴木(“ぶどうのたね保育園”園長)の物真似をして津田 木村、超大爆笑。
津田「この企画はね、職員の事を私が知るということと、もちろん私の事を知ってもらう狙いもあるけどね、会社とか私に要望とか言いたい事があれば聞きますよ。というスタンスなんだけど、聞いたからって要望に応えられるか? となるとそれは簡単じゃないけどね」
木村「ここで、頑張ってお仕事させていただいているので」
津田「ですね」
@少し間が空いてしまう
野田→木村
「このまま、ここで終わってしまうと時間が短すぎるので私から質問させてもらいます。今? かなり以前から保育士さんへの風当たりが世間で強いんですが、木村さん的にはどんな思いですか?」
木村「えーーと、不適切保育とかですか?」
津田「あっ!! そっち?」
木村「確かに、本当に、警察が入るようなですね、あれは本当にアウトだとは思うんですが、なんでもかんでも不適切保育と言われると、難しい部分があると思います。
食事にしても強要まではいかないけれど、だからと言って、食べたくない嫌いな物を『全部残そうね』っていうのは如何なものでしょうか?」
津田「それはそうよな」
木村「その渦中で『頑張って食べよう』『これだけでも食べてみようか』とか、これを強要と言われると、不適切とか言われると、それこそ保護者の方の子育て方針の違いと、保護者の方が望むというか理想とする保育園と私たちが想う理想に捻れが……」
@これまで笑いの渦の中で語っていた木村。しかし、この問答になり表情が一気に引き締まった。
木村「『子供の気持ちを尊重してあげてください』。これも理解できるんですが、なにもかもを尊重することはですね………難しくって」
野田「そこの仕切り線は難しいですよね、本当に! 特に現場最前線に立つ人は。
『プロなんだから』と言われるだろうし。ボクは70歳になりましたが、今は意見じみたことはほとんど言いません。
『老害』を自ら気に掛けてますし、若い頃は『あのクソ爺いが』とも思ったりしてましたから。
言葉も、ハラスメント的圧力が気になって声も萎んでいます。で、ボクと木村さんでは四半世紀のギャップがあります。木村さんと保護者にもかなりの世代間ギャップがあります。
保護者さんの間でも当然世代間ギャップはあるはずです。話せばキリが無いので打ち止めますが、この世代間ギャップの中で、全ての方向から『良し』とされるのは至難の技では太刀打ちできませんよ。ある意味、答えが無いんだから」
木村「私たち同年代では伝わることも、伝わらない。ゼネレーションギャップって片付けてしまうわけにはいきませんが、『本当に難しいな』と日々思っています」
野田「では、もう一つ聞きます。直球で! 子供は可愛いですか?」
木村「可愛いですよ。本当に可愛い! 我が子が大きくなる分、こんなに小さい子と関わることはここの保育園だけですから」
津田「我が子はいくつなん?」
木村「上が大学4年生。下が高校2年生」
津田「大きくなったんなあ!」
木村「私の全盛期は終わってます。ママ・ママって言ってくれることはもうないから。今ここで、先生・先生って言ってくれて、可愛いわあ!」
津田「可愛いよねー」
@この後、子供の躾。我が子の反抗期への対応とか津田・木村の両者からリアルな話題が飛び交ったのだけれど、 “ここだけの話”との約束もあり、この対談での文字化はここで終了とした。
しかし、木村は良く笑う人だった。その笑い声が幼い子供のようにも聞こえた。そこを表現しきれないのは少々残念。写真で推測・想像してもらうしかないけれど、スコブル楽しい時間でした。