ー2025年2月20日ー
はじめに
藤井智子。智子は(さとこ)と読む。前回、前々回とは異なり、穏やかさと和みに包まれた中で対談は進んだ。
津田「藤井さんは、ここに来て長いですよね」
藤井「長いです。10年は遥かに超えました。50歳で来ましたから」
津田「えっ! 50になって仕事を始めて、それまでは仕事をしてなかった?」
藤井「それまではアルバイト的で、保健所とか市役所の住民健診へ」
津田「保健師さんを持ってるもんね?」
藤井「それは持ってません。持ってないけど看護師として検診の手伝いとか、検診結果のチェックとかの仕事があれば連絡が来るんです。『お願いできますか?』って」
津田「じゃあ、アルバイトみたいな感じでのお手伝いだったから、今みたいにガッチリ仕事っていうんじゃあなかったんだ。それは、子育てがあったり?」
藤井「そうですね。子育てだったり、脚がね…」
津田「脚が悪いけんね。一般病棟とかで働くということは難しかった?」
藤井「難しいかな? と思う、自分で」
津田「そうかー。でも、脚が悪いのは昔から?」
藤井「病院では『昔からそういう傾向はありましたね』と言われたけど、実際に痛みが出たのは40歳を過ぎてから」
津田「あっ、そうなんじゃ。それまでは痛みもなく普通に生活できてたんじゃ。じゃあ、40歳までは?」
藤井「二人の子を出産して、そこで仕事を辞めて…」
津田「そのときの仕事っていうのは看護の仕事?」
藤井「病院で看護師をしてました」
津田「それは、夜勤なんかもやってた?」
藤井「3交代でやってました」
津田「そうなんじゃ。それは大変だったね。じゃあ、そこからはブランクがあって、脚の痛みも出てきたりして、なんだかんだあってからの“ぶどうの家”だったんだ。でも、そこでよく“ぶどうの家”へ来てくれたよね?」
藤井「山本さんから『“ぶどうの家”で働けるよ』って背中を押してもらえましたから」
津田「そうかー。そういう友達からの誘いって大きいよね」
藤井「ですね。知り合いがいて、友達が大丈夫って言ってくれたので心強かったです」
津田「来てくれて良かった。で、ここに来てみたらどうだった?」
藤井「ゆったりと時間が流れてる。それが第一印象でしたね。病院とは全く異なる雰囲気でした」
津田「暮らしとるからなあ!」
藤井「暮らしがある所だから、グループホームは帰る所じゃなく家になってるから」
津田「そういう雰囲気というか、今を作ってくれたのは職員の皆だから。特に藤井さんとかは、車の免許もないし訪問もほとんど行かないから、ここで暮らしてる利用者さんたちと一緒に時間を過ごし生活を作ってくれてるもんね。
で、看護師さんだけど、看護師だけの業務をやりますっていうんじゃなくて、生活を一緒に作るという視点で動いてくれてるから本当に有難いです。皆で一緒にご飯を作ったりとかね」
藤井「生活が、先ずは大事だから」
津田「そこは、頭では理解していても自然に出来る人って少ない。そこを、藤井さんは率先してやってくれてる気がするんよな」
藤井「看護師で仕事をしてたとき、外科系の病棟もあったけど長く勤務したのが心療内科でした。
生活でストレスが溜まった人が入院してくる病棟だったから、そこで一緒に話を聞いて『じゃあ、こうしよう』という様なことは以前からあったから」
津田「そうかー! そういう基礎があっての流れがあるんだね」
藤井「そうだと思います」
津田「ここに来て、どうだった?」
藤井「小規模がありますけど、私は訪問に出られないので通いで来る人を理解するのに時間が必要でした。
家庭の様子が分からないから。でも、無理を言って訪問に同伴させてもらったこともありました。
『こんな環境下で暮らしてるんだ』。住んでる現実を見て、その人なりを一層理解できましたね」
津田「そうそう。見ると聞くとは大違い、みたいなね」
藤井「ええっ!! って。Mさん家なんかは典型でした」(二人で納得しながら爆笑)
津田「そうそう。でも、ポチポチと、今も行けるところは他職員と一緒に二人での訪問とか行ってくれてるから。行ってくれると凄く助かるし有難いよね。訪問に行くと生活が、なんて言うかな?」
藤井「見える」
津田「そうそう。ここに来てるときの顔と、家にいるときの顔は違うよね」
藤井「そうですね。違う。ここに来たら、他所行きの顔もあるし」
津田「だよね。するよな。そのメリハリも良いんだけど。グループホームにいる人にとっては、あそこが家だから。小規模の人にとっては、お出かけの場所になってるから、両者は全く表情が違うよな」
藤井「確かに、それはありますね」
津田「藤井さん、利用者さんと長い長い付き合いもして来てるよね。
最初は通いで来てた人。で、その人が泊まりになり、その後にグループホームに入居し最後に亡くなって。
という過程での付き合いもあったよね? 誰か印象に残ってる人はいる?」
藤井「ズーーート関わってこれたのはNさん」
津田「長かったなあ、Nさん」
藤井「Nさんは最初、花帽子に来られてて、グループホームに空きがあったので息子さんがグループホームにって」
津田「じゃあ、通いはあまり無かったんだ?」
藤井「通いは無かったんです。こことは違う所のデイサービスを利用してたので」
津田「そうかそうか。Nさんにとっても良かったんかもしれんね。元々行ってたデイサービスを変わらないでそのまま」
藤井「花帽子に少しいたんだけど、グループホームの空きがあって。息子さんが、やはり本家・小規模の流れが強かったから…」
津田「息子さんにとっては奥さんが、本家の小規模を利用をしとったからね」
藤井「スタッフとも顔馴染みになっていたので、知ってるスタッフがいる所が良いと。安心感もあったんでしょうね?」
津田「やはり、馴染みの関係は大事よねえ」
藤井「グループホームに入っても、息子さんから話がよく聞けるし、頻繁に訪ねて来てくれるしで」
津田「家族との関係もね」
藤井「良かったと思ってます」
津田「今もね、息子さんの奥さんが利用してくれてるし。奥さんとの関係も長いよね? 最初は通いで来てたん?」
藤井「通いでした。通いがあって、まだ歩けてた頃でした」
津田「そうそう。歩けとったなあ!」
藤井「普通にお風呂も」
津田「でも、そのうち胃瘻になって…」
藤井「食べれなくなって。それからは訪問だけに…」
津田「時々、行ってるんよな?」
藤井「行ってます」
津田「それって、ご家族にとっては安心よね。通いの頃から関わってくれてる人が、訪問も来てくれて。で、泊まりに来ても知った顔が待ってくれていて」
藤井「そうなんですよね。ご主人には、心強いと思います」
津田「藤井さんが仕事をしてて、一番楽しいなあ! って思うのはどんなとき?」
藤井「そうですね。何気ない雑談が良いなあ! と。
話をしてるときにその人の、本音というか? そんな言葉が聞こえてくるような……」
津田「利用者さんとね? らしさ、があるよな。最初に利用したとき、凄く表情の固かった人が、どんどんと馴染んできて、ほぐれてきて、表情が変わったりすると凄く良いし嬉しいよなあ! あと、Sさんは知ってる?」
藤井「Sさん。百歳のおばあちゃん」
津田「長かったよな、Sさんも」
藤井「Sさんも、来たときは通いで。いろんな話をしてくれた記憶があるんです。
何を話たか? そうそう。和裁をしてたから、その辺りの話でしたね」
津田「そうなん! 藤井さんも和裁するの?」
藤井「しないけど、分からないけど。だけど、Sさんの指が変形してて… で、『どうして?』って聞いたら、縫い物するからって教えてくれたんです。だから、長くやったんだなあ! って気付いたんです」
津田「昔の人は凄いよなあー!」
藤井「こんなになるまでしてたんだって、驚きました」
津田「それと、陶器の枕だったじゃん。覚えてる?」
藤井「覚えてる。陶器の枕でしたね」
津田「あれが良いって。私は、絶対あれでは眠れない」
藤井「私のお祖父ちゃんがしてたんですよ。夏は、頭が冷んやりして気持ちが良いって。
明治の人は珍しくないみたいですよ」
津田「藤井さんが、これからやりたいことは?」
藤井「えっ!! 今までどおりで良いかなあ」(二人して爆笑)
津田「でも、それが良いよな。今までどおりを続けていけるってね。利用者さんもさあ、来てから長生きでしょ。元気を保ってくれるっていうのは、最高」
藤井「今、出来てることを、これからも、ずっと保ってくれたら良いですよね」
津田「ホント! そうなんよ。
それは、藤井さんとかが、皆の健康をちゃんと気遣ってくれて、保ってくれてるからこそ続けてられるわけで。
皆、細かく見てくれてるよなあ!
『ご飯、この人はこんなのが食べられる』とか、良く知ってる。
ああいうの、ちゃんと見ていけてるところは良いよなあ!」
津田「藤井さんから、私に要望とかはある? 『もっと、こうしたら良いのに?』とか」
藤井「今、スタッフに若い人が入ってくれて、かなり刺激になるし、若い人って良いなあ! って」
津田「ホントだねえ! 一時ね、スタッフがおらんかって、どうしましょう状態になって、皆に心配をかけたり苦労もかけたけど、ここで少し改善されました。
で、そういう新しい風が入ったのもあるけど、皆がちゃんと自分で考え動こうって思ってくれてるから、今、かなり主体的よね。スタッフも他人任せじゃなくて、しっかり自分で考えて。
しかも利用者さんのことを一生懸命に考えてやろうとしてくれてるから、凄く良い風が吹いてる」
藤井「私が“ぶどうの家”に来て思ったのは、私は看護師だけど、病院にいたときも皆が看護職で看護一色。だけど、看護職って前職があって介護になった人も多くて、幼稚園や保育園の先生をやってた人もいたし、事務をしていた人もいたし、皆がいろんな経験を踏まえて来てるから良いなあ! って」
津田「そうよね。いろんな生活の経験があって、そこで合わさる力があるから凄く良いよね」
藤井「病院では皆が看護師で同じ経験しかなかったから。看護学校を出て看護師に。PTAの仕事をしたとき、いろんな職種の人がいて楽しかった。いろんな職種を経験している人と働くのは楽しいなあ!」
津田「楽しいよなあ! そう思う。
来年、高校を卒業したばかりの子が入ってくるんよ。あ
の子は介護畑で育って、これから介護の現場に入ってくるから、皆に上手に育ててもらえば良いなあ!
いろんな経験をしてきた
“お母さん”たちが、イッパイおるから」
藤井「私なんかは “おばあちゃん”になってしまうけど」
津田「私も」(二人、大爆笑)
藤井「河田さん(21回に登場)が、ものすごく楽しいわー」
津田「面白いよねー、彼。皆の力が合わさって、ここも段々に良くなっていると思います」
今回、対談中に私が言葉を挟むことはなかった。
@マークを付けて、途中の状況説明も入れなかった。
粛々と対談は進み、二人、納得し合いながら終わった。