ー2026年6月30日ー
はじめに
河村は饒舌ではない。照れながら、一語一語を考えながら語り、短いセンテンスで会話を区切りボチボチと対談は進んで行った。
津田「じゃあ始めますね。よろしくお願いします」
河村「よろしくお願いします」
津田「あっ! ゴメンね。マスクを外してくださいね」
河村「治療中で歯がないんですけど?」(苦笑い)
津田「歯が、ない?」(疑問と驚きで、「ない?」の声が2オクターブ跳ね上がる)
野田「あっ!! 大丈夫です。口が開いてる顔は撮りませんから」
津田「歯がないって、どういうこと? 部分的にないの?」
河村「前歯がないんですよ」
津田「折れたん?」
河村「折れました」
津田「なんで?」
河村「格闘技してて折れて、事故で折れての繰り返しで」
津田「事故って?」
河村「自転車に乗ってて」
津田「スピードが出る自転車?」
河村「そうなんですよ。交通事故で」
津田「それは最近?」
河村「でも、もう2年前ぐらいですが、まだ治療中なんです」
津田「ここに来る前?」
河村「そうなんですけど、治したり壊れたりの繰り返しなんです」
津田「治したり壊れたり、治したり壊れたり? じゃあ、世間が皆、マスクを嵌めてた頃は良かったね」
河村「そうなんですよ本当に!」(苦笑い)
津田「なるほどね。さて、河村さんは以前から介護の仕事をしていて、『良くぞここに来てくれました』って感じで……偶々、看多機に訪問入浴で来てくれていた職員さんで、偶々そこの会社が訪問入浴を廃止するということで、『じゃあ、ここに来て来て』っていう経緯で来てくれたんだよね。ま、偶々が重なったんだけど、河村さんはズーート介護?」
河村「ズーートじゃないんですけど、岡山コープにいたりとか…」
津田「岡山コープ?」
河村「営業とか配達をしたり、ですね。あとは介護です」
津田「幾つのときからコープ?」
河村「コープは20代に4年くらいいました」
津田「4年というと結構長いね。じゃあコープにいて、配達して。そこから介護?」
河村「戻ったんです」
津田「エッ!! 戻った? 元々は介護だったん?」
河村「18から介護です。学生の時に福祉の勉強をしてて」
津田「学生? 高校?」
河村「高校からですね」
津田「高校で福祉の勉強をしてたん? それは凄い!」
河村「そこからグループホームと小規模多機能。もっとも、その頃は小規模はなかったんですが」
津田「なかった?」
河村「なかった気がするんですけどね? グループホームで働いて、小規模っていうのが出来たときに立ち上げに関わった気がするんですが…」
津田「なるほどね。グループホームと小規模で働いて、2~3年働いた後にコープに行って、そこから介護に戻った?」
河村「ザックリ、そんな流れです」
津田「高校から福祉を勉強して、介護施設で働いた後、なんでコープへ?」
河村「過疎地で働いていて、買い物とか困っている人とか地域の話を聞いていると、お年寄りに営業を掛けたらどうなんだろう? って思ったんです。当時は移動販売なんかも来ていない時代でしたから、貢献できたら良いな! と思いコープへ」
津田「それは凄い! 着眼点が河村さんらしい! というか『自分にできることならやりますよ』みたいなところが良い」
河村「で、過疎地に営業行ってました」
津田「凄く喜ばれたんじゃない?」
河村「お客さん、結構増えましたね」
津田「そうよね。そこの人たちの暮らしぶりとかを理解して『コープで出来ることはこういうことですよ』って販促して行ったら、それは喜んでもらえるよね? 過疎地ってどの辺り?」
河村「足守の奥の方とか吉備中央町とかですね」
津田「それは皆さん困ってたよな? 今から何年くらい前かな?」
河村「10年くらいになるんじゃないですかね?」
津田「過疎地で、店もドンドン潰れていってただろうから?」
河村「そうなんですよ」
津田「ふうーん。最初、なんで介護からコープと繋がったわけ? 直結せんよな? コープの存在を知ってたから?」
河村「直結しないんですけど、知ってたんですよ仕組みを。買い物が不便っていう人がおられても、グループホームなんで助けることができないというか? ま、それでやってみようかな? と」
津田「つまり、『じゃあボクやります』ってコープへ飛び込んだっていうこと?」
河村「はい、行きました」
津田「へっーー!! 凄い!! その行動力」
河村「まあ、そことは縁を切ったわけじゃなくて、結局、また戻ったんです」
津田「なぜ?」
河村「小規模を立ち上げるから戻ってくれないか? ということで。
グループホーム→cope→小規模多機能ですね」
津田「そうかー、なるほどね。ところで、 河村さんってイッパイ資格を持ってるじゃん? 何を持ってる? 私が知らない資格なんかを」
河村「いえいえ、そんなにないですよ。うーーーーむ?? ボーとしておられん時期があって、本屋に行ったら偶々その資格と出会って」
津田「それはコープの時代?」
河村「20代全般に、いろいろ勉強してました」
津田「勉強が好き?」
河村「それはないです。大嫌いです。小中学校、鉛筆を持った記憶はないですね」
津田「でも、そんな風で、なんで資格に向いたんじゃろ?」
河村「その時期が、 “資格がないとダメ”という時代だったのかな?」
津田「資格があったら強いよ、みたいな」
河村「そうそう。そんな時代だったです」
津田「なるほどね。どういう方面? 電気系?」
河村「電気。他いろいろですけど……」
津田「幾つぐらいあるの? 10くらい?」
河村「ないです、ないです本当に」
津田「電気系って難しいじゃん? 私からすると。プラスとマイナスくらいしか分からないからさ。その『電気を取ってみよう』っていうのは、どこから来たんじゃろ? 元々から得意?」
河村「得意じゃないですよ。ただ、周りの影響かもしれないです。電気関係で働いてる人とかに話を聞いてたら『これはイケるんじゃないかな?』と。取れれば便利じゃなって感じでした」
津田「実際、河村さんて凄いじゃん。『これってどうしよう?』って聞くと『ハイハイ』って直してくれるし。車の知識とかも凄いし。車は好きなん?」
河村「はい。車は好きですね」
津田「それで電気と繋がるんかな?」
河村「電気は、小さい頃から分解はしてましたね。壊して直して壊して直して、それを繰り返してましたから」
津田「なるほどね。じゃあ、福祉とかを勉強しようと思ったのは?」
河村「福祉は、恩師がおったわけです。ボクにも」
津田「恩師? 中学時代?」
河村「高校におったんです。良い先生が。高校に教えに来ていた講師が、就職したときの施設長で、そういう繋がりがあったんですね。そこで、勉強してみようかな? って」
津田「なるほどな。人に引かれたような感じ、ねっ!」
河村「そうそうそう。そうなんです。話に嵌ったんです」
津田「その先生が話てくれた中で、印象に残ってることはある?」
河村「印象? 『人生一回なんで思うように動け」』って言ってましたね」
津田「『やりたい事、やった方が良いよ』『やりたい事やらずに後悔するより、やりたい事やって後悔する方が良いじゃないか』みたいな? で、それを全うしてる感じ?」
河村「そうです」
津田「でも、根本的に良い人なんだなあ! って思う」
河村「ボクですか? 初めて言われた」
津田「ウッソー!! 良く言われるんじゃない?」
河村「今、社長に初めて言われました」
津田「ええっ!! そうなん? なんか、ズートそう言われて来たのかな? って。ギャハハハー」(爆笑)
河村「そんなん、言われないですよ」
津田「ホー! じゃあ、自分で自分をどんな人だと思う?」
河村「あのう、人は助けたいとは思うんですが、見返りなしで」
津田「オオッ!! いつもそんな風に見える。『役に立てる事はないかなあ?』とか『人助けになれば良いなあ!』とか。そんな動きをしてるんじゃなあ! って見える」
河村「人助けはしたいです」
津田「それは実現できてる?」
河村「ボク自身では良く分からないんですが、周囲もどう思ってくれてるか? ただ、やれることはやろうと考えてます」
津田「じゃあ、コープを辞めてまた福祉へ行って、その足守を辞めて、また違う介護の現場に行った?」
河村「あのう、訪問入浴っていう業種を初めて知って『ちょっとこれもやってみたいな』と思い挑戦してみました」
津田「あれも大変な仕事だもんね」
河村「大変でしたね」
津田「河村さんが一生懸命やるけん、ドンドン大変になったんだろうなって感じもするんだけどね。結構、遠方まで行ってたよね?」
河村「岡山に、週一回ほどしかおらんかったですね。県外ばかり」
津田「えっ!! 訪問入浴で?」
河村「そうです」
津田「なんで、そうなるんじゃろ? 地元に訪問入浴はなかったんかな?」
河村「人手不足で助けに行ったり、教えに行ったり」
津田「どこの業界も人手不足だもんね。ふうーーーん! 今それで、じゃあそこから真備の看護小規模多機能へ来て、どうですか?」
河村「それは、働きやすいですよ」
津田「働きやすい! どんなところが?」
河村「ウーーム? 結構、自由ですよね」
津田「自由って?」
河村「利用者さんに対して、したいことがあるとき、相談するとダメっていう否定が ホボホボないですよね。『やってみたら』って言われます。そこが、凄く働きやすいです」
津田「なるほど。河村さんの中には、ちゃんといつも利用者さんがいて、その利用者さんのために『何が出来るんかなあ?』っていう風に考えていてくれるので、そこがブレてないから『利用者さんのために必要なことはやっても良いよ』っていうところが事業所の方針と一致してるんかなあ? って思うんよね。 “ぶどうの家”に来て『こんなことが出来て良かった』っていうのはある?」
河村「自由にやらせてもらってます。外出にしてもそうですし、ご飯行ったりとか、ホント全部です。自由に」
津田「全部自由に! キャキャキャハハーキー」(大爆笑)
河村「『ここで訪問へ行きたい』とかでも、人がいれば行かせてくれたり時間を取ってくれたり融通を効かせてくれます」
津田「そのときに、気になる利用者さんがおって『定期の訪問じゃないんですが、訪問へ行きたいんだけど』って言ったら『あっ! 行っておいで』ってなるってことよね」
河村「そうそうそう。そうなんですよ」
津田「多分それは、チームとしてもちゃんと動けてる。だから誰かが『こうしたい』って言ったら『やろう やろう』とか『そうしよう そうしよう』っていう風に直ぐなる。それはチームとして目指してるところがちゃんと一致してて、そのための声だから、それはもう皆で応援しようというか活かしていこうといか『必要なことだ』という風に思えるところなんよな。だけど、逆もあるんじゃない? 河村さんが、他の誰かが『何かしたい』となったとき『良いですよ。後はボクがちゃんとやっておきますから』って」
河村「お互いが協力してやってますから、やり易いですよ」
津田「お互いにそれが出来てるんよな。今まで、やりたいのに出来ないっていうモヤモヤ感が…」
河村「ありましたね結構」
津田「それが解決した感じなんだ。それは良かったです。で、河村さんはいろんなサービスを見てきて、グループホームとか小規模とか入浴とかね」
河村「デイの相談員もやりました」
津田「いろんなサービスを見てて、感じるところはある?」
河村「それぞれに縛りがありますよね? 例えば、通所デイサービスでしたら家にも入れませんし時間も決まってるし」
津田「デイサービスだったら利用者さんから『帰りたい』と言われても『どうぞ どうぞ』というわけにはいかなかい。『絶対に何時までは事業所におってもらわんといけん』とかね。気になることがあるけど、送って行ってそこでサヨナラするしかなくて『これからこの人、一人でご飯を食べられるんかな?』と思ったりとかするけど、そこまでのことはやっちゃダメとか、そんな感じのことかな?」
河村「ま、いろいろ含めて気にはなるんですが、重度の方とか『家に帰って大丈夫かな?』と心配になります。だけど、それ以上の深入りはできなくて、ご家族に電話を入れることぐらいしか出来なくて…どれもメリット・デメリットあるんかもしれないですが?……」
津田「そうじゃな!」
河村「デイサービスに比べて小規模は幅が広いな、と」
津田「確かにね。そういうところの『必要だ!』と思うことは、できるよね。そういうのは、河村さんにはピッタリかもしれんね。ちゃんと、この人のためにって思ってる河村さんにはピッタリ。ところで、趣味も幅広い気がしますが?」
河村「趣味? 趣味は?」
津田「格闘技?」
河村「それは全然です。釣りは好きなんですが今はあまり行ってないし、ドライブくらいかな?」
津田「ドライブ? それは通勤なんじゃない?」
河村「通勤とは別ですよ。出掛けてますから」(二人爆笑)
津田「でも、通勤だけでも片道1時間は掛かるでしょ? で、更にドライブへも行くんよね? どこまで行くの?」
河村「仕事を終えて県外に行ったりとかして夜中に帰ることも多いです。この前は夜中に島根まで行きました。玉造まで」
津田「温泉に入ってくるの?」
河村「以前は入ってましたけど、いろいろです」
津田「運転してるのが楽しいの?」
河村「そうそう、そうです。何も考えずに、ただ運転することがボクには良い刺激になってるんだと思います」
津田「気分転換なんだ。そういう点では釣りも同様で、何も考えずに釣り糸を投げて垂らして、ただ反応を待ってる。それが良いんだ! 釣りは何歳頃からやってるの?」
河村「3歳? 4歳? その頃からです」
津田「海釣り?」
河村「はい」
津田「お父さんが連れてってくれた?」
河村「そうです」
津田「ドライブに釣り。他には?」
河村「今はそれくらいですかね」
津田「格闘技ってなにをしてたの?」
河村「元々は柔道をしてて、中学・高校と。で、総合格闘技を遊びでしてました。遊びでしてたんですが、鼻を折ったり眼球も骨折したりで」
津田「ハッハッハハギャハハハー。そうなんじゃ!!」(大爆笑)
河村「そうなんです」
津田「根っからの職人なんかなあ?」
河村「どうなんですかねえ?」
津田「面白いですー。河村さんが介護をやってて、良かったなあ! と思うのはどんなとき?」
河村「ここだったら、目標を設定して達成できたときはメッチャ嬉しいですよね。これは目標じゃないんですけど、家から出ない利用者さんが外に出てくれたことを聞いたときにも歓びを感じました」
津田「歓びが積み重なって行くんよな。それを、ここの職員だけじゃなくて、利用者さん本人や家族とも共有・共感できるところが更に良いよな。具体的には、誰がどんなことをしたの?」
河村「TさんとNさんが家から出られんかって、話し合って目標を外出にしたわけなんですが、ボクが誘っても出られなくて、それを朝礼とかで伝えてました。すると他の職員さんが声を掛けてくださって、TさんNさんの出身地である玉島へドライブに行けたとのことで凄く嬉しかったんです」
津田「あっ! そうか。河村さん担当の利用者さんなんだけど、その利用者さんと外出したいと思い目標にも設定したけれど、なかなか出て来られんかった? 出て来れんかったのは、なんで?」
河村「その日の気分とか、ですね。『辞めとくわー』って」
津田「遠慮とか? そういうのがあるんかな?」
河村「体調面もあってでしょうね?」
津田「なかなかその一歩が踏み出せんかったわけね。だけど、その目標を他の職員も知ってたから、なんかの切っ掛けで『今だ!』っていうときに誘ってくれたんだ」
河村「一応、家族さんにも相談してたんで、事前に連絡をくださって」
津田「家族もチームじゃけんな。そういう『今だ!』っていうタイミングが、やはりどの人にもあるからね。それをガチッと掴んで『今だ!』っていうときに動けるっていうのは、小規模・看多機ならではかもしれんよね。
デイサービスだったら『今日はデイサービスの日じゃありません』ってなってしまうもんね。そんなん嬉しいよな」
河村「嬉しいです」
津田「ここは男性も多いじゃない。皆、男性陣は仲が良さそうだけど?」
河村「職員同士で仲は良いですよ」
津田「男性に限らず、職員間のノリは良いよなあ! 河村さん、これからここで、こんな事をやってみたいとか、自分がこんな風になりたいとかありますか? 目標というか? そこまで大きくなくても良いけど」
河村「今、目標を見つけるのが目標なんですよね」(苦笑い)
津田「自分自身の? 案外、やりたいことがドンドン出来てるから達成感はあるんかも? ね」
河村「基本、困った人を助けるということで仕事はしています。これはブレないと思います」
津田「よろしくお願いします。じゃあ、今日はありがとうございました」
河村「ありがとうございました」
粛々と進み、粛々と終わった。前歯が2本欠けているということだったが、その現実を見ることはなかった。