[第28回]

住宅型有料老人ホームぶどうの家花帽子

介護職員・濵田真一郎(39歳)


ー2025年3月20日ー

はじめに

 

 “ぶどうの家”にはユニークで個性的な人たちが多いのだけれど、濱田はその中でも筆頭を走っているのではないだろうか? 文中ではボカシてはいるが、その筋では有名なバンドの一員ということらしい。『知る人ぞ知る』……

|介護は “潰しが効く”仕事

津田「濱田さんは、介護を始めて何年くらいになるのかな?」

 

濱田「うーーんと? 10年? 11年? そのくらいです」

 

津田「なんで、介護をしようと思ったの?」

 

濱田「ボクはですね、以前は沖縄に住んでたんですが、沖縄に引っ越しするにあたって『仕事はどうしようか?』と考えたときに『介護が良いよ』『沖縄は長寿県でお年寄りも多く、需要がある』って聞いたので、先ずはヘルパー2級の資格を取ったんです。そこが介護の始まりで、沖縄に引っ越して直ぐに介護の現場に入りました」

 

津田「なぜ沖縄へ? 出身は倉敷だよね?」

 

濱田「倉敷です。で、音楽なんですが、今やってるバンドに加入するために沖縄へ。
当時、リーダーが沖縄に住んでたんですよ」

 

津田「そのバンド名は内緒よね?」

 

濱田「うーーん? ですね」(二人大爆笑)

 

津田「今、バンドをやってて、そのバンドに加入するために。で、その人たちは沖縄で活動してた?」

 

濱田「まあ、そんな感じです」

 

津田「でも、音楽だけでは食べていけないから、他の仕事も?」

 

濱田「そうです。生活をするための仕事ということで介護を選びました」

 

津田「それって珍しくない?」

 

濱田「意外とあるみたいですよ。音楽と介護あるある、みたいな。結構いるみたいですよ、実は」

 

津田「そうなんだー! 確かに、介護ってどこに行ってもあるし、基本がそんなに違うわけじゃないからね。
ある程度を身に付けておけば、直ぐに働ける」

 

濱田「そうなんです。正に “潰しが効く”んですよ」

 

津田「素晴らしい資格よね」

 

濱田「それは本当です」

 

津田「でも、そんな人ばかりが集まって、介護をするっていうのも楽しいだろうな?」

 

濱田「ですね、確かに!」

|介護感

津田「濱田さんの介護感って、どんなんだろう?」

 

濱田「介護感? うーーん??」(唸りながら、しばし黙考)

 

津田「生活のために始めたわけでしょ? 介護を職業として選んだ。で、特に “お年寄りが好き” とか “福祉がやりたい”というよりは……」

 

濱田「そうなんですよ。そういう感じじゃないんです。まあ、誰でもそうかもしれないんですが、介護感もやっていく中で芽生えたのいうのが実情です。で、簡単に言ってしまえば “寄り添う”って言葉がピッタリのような気がします。常に心掛けていることでもあるんです」

 

津田「職業として介護を選んだ人たちが、介護感で“寄り添う”とか………
(ここで津田は数秒間、言葉を選んでる様子)それはある意味、技術的なことだったりするわけじゃん。
気持ちだけではなくて、技術的なところもあったりとかして。
それってある意味、良いなあ! って思えてて、いろんな仕事とか、いろんな場面とか、いろんな友達とか広い世界を知ってる人たちが、この介護で一緒にやってくれると凄く良いって風に思えるんです。

いろんな人が来てくれてる今を見てて。偏らないというか幅広い視点というか、当たり前なんよ皆が。
その当たり前さが良いなあ! みたいな感じがしていて。

だから私等は単純に“寄り添う”って言葉と、濱田さんたちが思う“寄り添う”って、なんか違うんじゃないか?」(津田は一語一語を噛み砕くようにゆっくり語る。濱田は津田が言葉を区切るとき、ハイ、ハイと頷いている)

|濱田的“寄り添う

濱田「ああ!! そうでしょうね、確かに! それ、指摘されたことありますよ」

 

津田「どんなとこで感じる?」

 

濱田「今、ボクは実践者研修というのを受けてるんですが… で、一見、何をしてるのか分からないこととか、利用者さんでありますよね? その人がどう感じてるのか? 何を考えてるのか? 何をしようとしてるのか? みたいなことは考えようとはしてますね。それを言葉で表現すると“寄り添う”なのかな? 気持ちとか、上手く伝えられないこととかに“寄り添う”というか理解しようというか? ボクはそんな感じです」

 

津田「ちゃんと言葉としてというか、相手に分かるような表現ではないけど、逆に言えば私たちからすると『なんでそんなところで怒ってるの?』とか『なんでそんなモノ壊すの?』『なんで暴れるの?』とか。一瞬、理解しがたいようなことなんだけど『どうしてかな?』って思うと分かってきたりする?」

 

濱田「まあ、分かるときもあります。明確に『これだ。こうだろう!』と思い対応したら止んだこともありました。だけど、分からないことの方が多いですけどね。ま、分かろうとし続けないといけないですけど…難しいですけどね」

 

津田「その辺が凄いんよ」

 

濱田「えっ!! そうですか?」(苦笑い)

 

津田「単純に、感情だけでやってないじゃん。仕事って選んでるっていう自分なりの覚悟もあると思うから、そこで自分が生業として、それのプロになろうとしてる。そういう姿勢があるんかなあ!」

 

濱田「そうですね。それはあります」

 

津田「それは凄い! だから、利用者さんが訳のわからないことをしても、言っても、単純に腹が立ったりとか『さっぱり理解できん』という風に終わらせない。きちんと向き合う。

だから、データ的になるかもしれないけど、いろんな情報を得るとか、いろんな人から意見を聞くとか、それを総合して自分の中で考えてチャレンジして『あっ! これだったんだ』『これ違ったな』とか、体験として積み重ねていって、それが濱田さんの中での経験になって、厚みになって技になってるんかなあ! って感じがする」

 

濱田「そうなんですね。なんか? プロ感みたいなのが自分の中にあるんで、どんな職業でもですね。『プロだったらこうあるべきでしょ』みたいな。なんで、介護やるにあたっても、一応それでお金を頂いているわけですからプロってことになるんで、『それはやらなきゃな』という義務感というか……なんていうのかな? プライドというか?」

|プロとしての安定感・プライド

津田「そうそう。プライドだね。で、そのプロ感ってどんなモノ?」

 

濱田「そうですね、うーーんと? ボクが『プロはこうあるべきでしょ』と思うのは幾つかあるんですけどね。一つは安定感だと思ってます。介護で例えるなら “好きな 利用者さん” “気持ちが合う利用者さん”は良いんです。で、そうじゃない人がいます。 “苦手な人” “合わない人”。その人たちにも100点は出せなくても、プロなら80点くらいは出してやるべきでしょ、とかね。相手を選ばないという安定感もあるし、自分の体調とか気分とかが悪くても利用者さんと接するときは明るく、相手の気分が悪くならないよう考え、動く。そういう自分を律するっていう意味での安定感。この安定感というのはプロとしての矜持という意識はあるんです」

 

津田「確かに! 今、寿司職人さんが過ったよ」(二人で大爆笑)

 

濱田「そうですよね! 日によって味が違うんじゃあダメじゃないですか」

 

津田「『どんなお客さんが来ても美味いもの出すぜ』みたいにね」

 

濱田「後は、向上心もありますし、それを持ち続けないとですね。イチローが言ってます。『現状維持は退化』だと。刺さるんですよ」

 

津田「良いよなあ!」

 

濱田「現状維持をやってる間に他の人とかが伸びていくと、相対的に自分が退化していることになる。というようなことを言ってたんだと思うんですが、プロなら常に向上していかないと、前に進んでいないと、みたいなですね。介護もそうだと思います。プロ感としては」

 

津田「そうね。自分自身も、そうやって高めていかないといけないんだけど。人間性を高めるとか、介護技術を高めるとかね。介護の業界も目まぐるしく変化してる。そこをちゃんとキャッチして、全部が全部、目まぐるしく変わっていることに付いていく必要はないと思ってる。でもその中で、必要な情報を掴んで自分に活かせる所は活かせていけば良いかなと思ってる。ただし、翻弄されるのは絶対に嫌だから、『自分はこうだ!』という信念だけは曲げないで進んで行きたい」

 

濱田「あとは、先にも言いましたけどプライドですね。上手くいかなかった時とかに、 “悔しい”という感情・姿勢は必要ですね」

 

津田「大事ね。そりゃあ、上手くいかんことの方が多いよな」

 

濱田「そうなんです。上手くいかないことが多いんですけど、悔しいことも多いんですけど、でも、プロってそういうもんじゃないんでしょうか? ハイ」

 

津田「そうかー。プロ意識があるから、ここでの介護とかに凄く活きてるのかな?」

 

濱田「それは、あるかもしれないですね。“寄り添う”意識とプライドは、常に持ち合わせながら仕事していることは事実ですから」

 

津田「そういう濱田さんの姿勢を見て、他の人たちも影響を受けて『一緒にやろう』って気持ちになってるんじゃないかなあ?」

 

濱田「そうであれば良いんですけどね? 正直言うと、皆、ボクに引っ張られてるのかな? というのはあります」

 

津田「そうね。絶対そうだと思うよ」

 

濱田「自分で言うのもなんですけど、感じることは多々あります」

 

津田「介護だけじゃなくて、いろんなことを知ってたり経験してたり、そんな経験から来る思考を持ってる濱田さんが、ここで介護を一緒にしてくれてるのは凄い強み」

 

濱田「そう言って頂けると凄く嬉しいです。ありがとうございます」

 

津田「倉本君(第24回登場)が凄く悩んでいて、『自分じゃ限界』ってまで悩んでいて、でも、それをなんとか克服したいという思いも捨てずに持っててくれた。

 

もう、投げたらお終いじゃない。『自分はここまで』となってしまったらプライドもなにもあったもんじゃないけど、『上手くいかないけどなんとかしたい』という思いを持ち続けてくれた。

 

それを自分で消化できなくて、いろいろあったりもしたけど、それをちゃんとキャッチもしてくれるメンバーがいた。で、濱田さんに声を掛けたら『一緒にやろう!』って今回も言ってくれて、私は凄く心強いなと思った」

 

濱田「ありがとうございます、はい」

|これからの花帽子

津田「ところで、花帽子がこうなったら良いなあ! っていうのはある?」

 

濱田「そうですね。やはり実践者研修を受けているというのもあって、それが強いんですけど…」

 

津田「濱田さんには、全国の小規模多機能事業者連絡会主催の実践者研修を受けてもらってます」

 

濱田「勉強中なんですけど、そこでも出てきたんですが認知症の人の行動とか言動には必ず理由がある。背景がある。そこを見れる、見ようとする。考える、考えられる。で、仮説を立てて実際やってみて。っていうような、介護士として前向きな建設的な見方ができるようになれば良いなあ! と。花帽子全体で!」

 

津田「うんうん」

 

濱田「どうしても、目の前で起こることに対処するようになりがちじゃないですか? 出て行こうとするから鍵を掛ける。花帽子では絶対にありませんけどね。で、鍵を掛けちゃったりとか、とりあえず薬を飲ませてとか。起きてることに、ただ対処するだけじゃなくてその背景をちゃんと考えて。そして本人にとっても不本意じゃない形で。そうであれば、職員も利用者さんも納得し良いことばかりじゃないですか」

 

津田「今までそういうことを、考えながら思いながらやって来てくれて、研修を受けることで、それが理論立って自分の中で腑に落ちていくんじゃないのかなあ?」

 

濱田「そうなんです。『裏打ちされたなあ!』って。だから、『自分は間違ってなかったなあ!』 という部分と、ぼんやりしていたのモノが明確になって『嗚呼! こういうことだったんだなあ!』とハッキリ分かった部分もありましたし、新しく知ることもありました」

 

津田「益々自信がついた。今までやって来たことに、キチンと裏打ちされて言語化できた。で、ちゃんと皆にもそれが伝えられたら? 凄く良いよね、花帽子全体の雰囲気が良くなる。『そういう風にやっていけば良いんだ』っていうのが、皆の中で分かってくれば、もっともっと出来るよね。今は、職員が割と直感的なんよな。私もそうなんだけどね。直感的に動いている人もいれば、分析して言語化して考えてやってる人もいる。でも、それが何のことか分からずお手上げの人もいて、だからそれを皆でちゃんと言語化しながら悩みながら一緒に考えながらやっていけばもっともっと良くなるなあ! と思ってる。多分それが、倉本君の望んでることでもあると思う」

 

濱田「ボクもそう思います。  “お手伝い”と言うと他人事にように聞こえますが、ボクも一緒に進められたらと思います」

 

津田「これから少しずつスタッフも増えて、スタッフが増えればそれなりに問題も増えるんだろうけれど? それでも仲間が増えればね、いろんなことを一緒に取り組めるようになるから、倉本君の思ってることもやっと実現できるだろうなあ! と思うんよ。なにより、チームで動いていけるっていうところが一番良いなと思うから、凄い期待してるんよ」

 

濱田「はい。ありがとうございます。皆でやらなきゃいけないですよね」

 

津田「その良くなっていくところの過程に、一緒にいられるというのは非常に良いと思う」

 

濱田「自分の成長にも繋がりますし」

 

津田「濱田さんの持ってるプロとしての向上心だったりとか、そういうところが活かされる場面がイッパイ出て来るんだろうな」

 

濱田「そうですね。大変そうですけどね」

 

津田「メッチャ大変だと思う」

 

@津田 濱田 認め合いながらも二人で大爆笑

 

濱田「大変でしょうけど、挑戦していかなきゃ向上もないんで」

 

津田「多分、こんな風に笑ってる場合じゃないほど大変だと思うんだけど……とはいえ、そこは絶対に乗り越えられるし、良い世界が必ず待っているはず」

 

@爆笑 大爆笑が続く

 

濱田「ですね。ボクも楽しみです」

|介護と音楽の両立

津田「濱田さんは今、介護と音楽とを両立できてる感じですか?」

 

濱田「そうなんです。お陰さまで」

 

津田「それは良かったです」

 

濱田「お休みも1週間取ることもあるんですが、それもお許しを頂いていてお陰さまで両立できています」


| 職員・利用者さんの“生き甲斐”を応援

津田「じゃあ最後に、私に対してでも会社に向かってでも良いんだけど、希望とか要望があれば言ってみてください」

 

濱田「休みの融通もして頂いてますし、ある意味、要望は通ってるんですよ。ありがとうございます」

 

津田「それはね、スタッフの  “生き甲斐”というか楽しみ。そこも応援できないと、利用者さんの“生き甲斐”も応援もできないもんね」

 

野田→濱田
「素晴らしい! だけど、1週間の休暇が取れなければ、バンドという“生き甲斐”も失うし、凹んで退職を考えたりしませんか?」

 

濱田「そうなんですよ。前の職場でも迷惑は掛けてたんですが、正社員ではなかったですから。でも、今は正社員ですから感謝しかありませんが、バンドを続けるために介護という職業を選択したわけですから」

 

津田「そう。仕事だけじゃなくて生活が豊かにならないとね。じゃあ、今日はありがとうございました。これからも期待しています」

 

濱田「ありがとうございました。頑張ります」

|終わりに

対談最中、濱田 津田 野田で5分程度のバンド談義があった。

ただし、冒頭でも記したようにボカシを入れた表現しかできないので割愛。

残念!! とはいえ、長く介護の世界を取材してきたけれど『介護は “潰しが効く”仕事』と表現したのは濱田が初めてのような気がする。確かに、言われてみれば現実はそうだ。勉強になりました。