2018年7月の西日本豪雨で被害を受けた倉敷市真備町箭田で、NPO法人「ぶどうの家わたぼうし」(同市船穂町船穂)が被災民家を改修して整備を進めていた交流施設が20日、オープンした。
木造2階の日本家屋に貸事務所用などとして4部屋(和洋室)と、ピザ窯付きの庭を整備。廊下の一部の壁はそのまま残し、災害の怖さを伝えている。
式典で同法人の津田由起子理事が「誰もが気軽に集い、つながることで地域の発展に貢献できれば」とあいさつ。地元の箭田幼稚園児や精神障害者支援のNPO法人「岡山マインドこころ」のメンバーらが歌や演奏を披露し、門出を祝った。
長女(4)と訪れた会社員(48)=同市真備町=は「利用して地元の絆を深めたい」と話した。
建物は豪雨で1階天井付近まで浸水。被災後に一部を改修して住み、21年に89歳で亡くなった男性は「憩いの場として残してほしい」と親族に伝えていた。その願いをくみ、わたぼうしは昨夏からボランティアの協力を得て改修し「土師邸」と名付けた。
週刊 「高齢者住宅新聞」
共同住宅に避難所機能 倉敷の介護事業者 発災時、住民の砦に
岡山県倉敷市で小規模多機能型居宅介護やグループホームなどを展開している三喜。
2018年に発生した西日本豪雨で被災した経験から、地域の防災拠点となる共同住宅の開設や住民共同の防災活動に取りんでいる。
以下 記事参照。
シンポジウム「気候変動時代の豪雨災害に備える」
災害への対策を考えるシンポジウム「気候変動時代の豪雨災害に備える」(公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構、朝日新聞社主催、山陽新聞社共催)が1月27日、岡山市北区柳町の山陽新聞社さん太ホールで開かれた。岡山県内に戦後最大級の水害をもたらした2018年7月の西日本豪雨から5年余の歩みを張り返 り、減災社会や地域防災の在り方を探った基調講演、パネル討論を詳報する。(文中敬称略)
持続可能な減災社会へ
基調講演「気候変動と災害のメカニズムから、防災・減災を考える」
京都大防災研究所長・教授 中北 英一氏
梅雨や台風による豪雨、土砂 災害は近年、ほぼ毎年発生して いる。これらは地球温暖化が影 響している。海水が髪まり、大 気は豪雨の「町」となる水蒸気 をより多く蓄えるようになる。 大雨の頻度は増え、1時間降水 量も総雨量も増す。過去に豪雨 災害がなかった場所でも起こり やすくなる。梅雨による豪雨の 発生はより東へ、より北へと変 わっていく。今までの常識は通用しない。
スーパーコンピューターを使 った将来の気象予測では、台風 が日本に到来する回数そのもの は増えないが、より猛烈なスー パー台風が増える。局地的なゲ リラ豪雨も回数、雨の強さとも ひどくなる。
産業革命以来、地球の平均気 温は約1度上昇した。2050 年には2度、江世紀末には4度 上昇するといわれている。科学 的な将来予測を踏まえ、昔の人 の知恵も借り、最新の技術で気 候変動に一刻も早く対応しなけ ればならない。
この10年、行政と温暖化への に後を議論し、文部科学省の プログラムでは科学的なアプロ ーチで治水の研究をしてきた。 治水には堤防を高くしたり、川 医を飼ったり、いろいろなハー ド対応があるが、それだけでは 太刀打ちできない。そこで必要 になるのが「流域水」の考え方だ。
川から水をあふれさせないだ けでなく、あふれても社会が守 られる治水を目指す。上流から 中視、下流まで行政、企業、住民も含めて対応していく。上流でも下流でも大地に水をためる ⚫できるだけ水を川に流さない ⚫一時的に田んぼに水をためる ⚫水が流れてきても迅速に避難 するなど、さまざまな対応を進めていくことが有効な適応策となる。
18年の西日本豪雨は中国地方を中心に広範囲で大量の雨が降り、局地的豪雨をもたらす線状降水帯も発生した。あちこちの 河川流域が水浸しになり倉敷市真備町地区では浸水想定エリ アが浸水した。呉市や愛媛県では土砂災害も起きた。ダムも満身創痍になり、緊急放流する事態が相次いだ。内水氾濫が起きたエリアも多い。
岡山平野の旭川は氾濫を免れ た。江戸時代に造られ、放水路となる百間川に水が流れたから だ。岡山城近くでは1934年 の室戸台風を受けて整備された 水路が岡山市街地を水害から守 った。歴史が生かされ、安全なまちになっているといえる。岡 山県南部には広大な干拓地があ り、温暖化で海の水位が高くな ることを見据え、かんがい排水も対応していかなければならない。
近年、災害は頻発化、激甚化している。気候変動に関するコンピューター計算の精度が 高まり、科学的根拠に基づいた予測といえるようになった今、 気候変動の将来予測を治水計画に生かすことが大切だ。地域の皆さん、行政を含め温暖化への 適応をより真剣に考えてほしい。
山陽新聞 掲載記事参照
真備 住人男性の遺志で保存・再生 豪雨被災民家 憩いの場に
2018年の西日本豪雨で被災した倉敷市真備町箭田の民家を地域の憩いの場とし て再生させようと、NPO法人「ぶどうの家わたぼうし」(同市船穂町船穂)が改修 作業を進めている。建物は浸水被害に遭ったが、住人男性の意向で解体されずに残され、男性の死後、遺族がわたぼうしに託した。一部は災害遺構としてそのまま保存する方針で、今年春のオープンを目指す。(山本貴之)
民家は木造2階建ての日本家屋で、4畳半~13畳半の和室6部屋に縁側や庭を備える。
日本豪雨では1階の天井付近まで浸水し市から全壊判定を受けた。1人暮らしだった男性は一 部を改修して住み続け、思い出の詰まった家を残してほしいと家族に伝えて21年5月、89歳で 亡くなった。
わたぼうしの関連施設が手がける訪問看護サービスを男性が利用していた縁で、遺族から相談を受けた。男性はかつて子どもたちを家に招いて絵を教えた り、被災地支援のイベントでハーモニカ公演を披露したりと、地元の人気者だったという。
わたぼうしは男性の人柄や思いを尊重して再生に乗り出し、23年夏ごろから 改修を進めてきた。
工事には地域住民やボランティアの高校生らのほか、災害時の緊急支援に携わる認定NPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」(広島県神石高原町)も協力。 家財の運び出しや剥がれた土壁の修復、床や畳の張り替えなどに取り組んできた。
地域に開かれた空間にするため、周囲のブロック塀を解体して低くしたほか、
災害の恐ろしさを次代に伝えようと廊下の一部の壁は直さずに残すなどした。
開所後の具体的な活用策は地域住民と相談して決める方針。わたぼうしの津田由起子理事は「真備町地区には戻りたくても戻れなかった
人や大切な人を亡くした方も多い。
誰でも気軽に立ち寄れる人と人のつながりが生まれる拠点にしたいと話している。
「TVの説明文章より」
4年前の西日本豪雨で多くの犠牲者を出した倉敷市真備町、3月17日、町内の高齢者施設に緊急時に避難できる防災タワーが完成しました。
防災タワーは、倉敷市真備町の高齢者施設、
「ぶどうの家真備」に併設されました。
高さは4メートルあり、4年前の西日本豪雨と同じ規模の水害でも水没しないつくりとなっています。
約4メートル四方のデッキ部分には、40人以上が避難できるほか、車いすでも上れる構造となっています。
3月17日は、施設の利用者や近所の住民、約30人が見学に訪れました。
(見学した人は…)
「こういうものがちょこちょこできたらみんな助かると思う。大きなのが1カ所にできたのでは、年寄りは歩いていけないし、近くにできるのが良いことだと思う」
タワー建設を進めたのは、「ぶどうの家真備」を運営する津田由起子さんです。
4年前の西日本豪雨では、施設が浸水し、町内では逃げ遅れた住民が犠牲になった苦い教訓から、入所者や職員、近所の人が避難できる場所を確保しようと、国の制度を活用してタワーを建設することを決めました。
(ぶどうの家真備 津田由起子代表)
「ここが防災のシンボルになればいいと思う。楽しい所でないと、いざという時行こうという気にならないので、ここも楽しい場所にしていきたい」
倉敷市によりますと、市内の高齢者施設に避難用のこうした施設が設置されるのは初めてということです。
2020年3月23日 取材:向田奈保
介護、福祉、医療界隈の物書き。1983年埼玉県生まれ、香川在住。高齢者住宅新聞社にて長く現場取材。
のちにフリー。 コミュニティ、まちづくり、場のチカラ、建築、空間、風景。旅と南米。organic。
noto-つくる、つながる、とどける https://note.com/ にて掲載。
2020年5月8日
noto-つくる、つながる、とどける https://note.com/
取材:向田奈保
介護、福祉、医療界隈の物書き。1983年埼玉県生まれ、香川在住。高齢者住宅新聞社にて長く現場取材。
のちにフリー。 コミュニティ、まちづくり、場のチカラ、建築、空間、風景。旅と南米。organic。
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