山陽新聞「日常と災害のグラデーション」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑い日が続きますがいかがお過ごしですか?

 

山陽新聞でサツキアパートについて記事掲載いただきましたのでご紹介します.

 

<記事全文>

〇日常と災害をつなぐグラデーション

 1959年に発生した伊勢湾台風の教訓をふまえて災害対策基本法が制定されて以降、私たちの国の防災対策は着実な進展を遂げてきました.他方で、対策が進展すればするほど,私達の生活のなかで災害を感じる機会が少なくなり,より一層災害が非日常化してきたことを意味します。

 

 昨今は気候変動の影響で極端気象による被害が多発しており、災害に対する備えのあり方、住み続けられるまちづくりのあり方にも変化が求められているように思います。

 

 そのポイントの一つとして「グラデーション」を紹介します。グラデーションとは、濃淡や明暗、色調であり、連続的に段階的に変化していく状況を指します。つまり、災害のない絶対的な安全環境を求めるのではなく、私たちの暮らしの中に日常と災害時をつなぐグラデーションを意識することです。

 

 西日本豪雨災害で被害を受けた倉敷市真備町箭田地区には、「サツキアパート」の愛称で地域から親しまれている大きなスロープを有した共同住宅があります。

 

 この共同住宅は、2階の1室がコミュニティールームとして地域に開放されており,健康体操や地域の集いなどに日頃から親しまれています.また,台風等の襲来が予想される時には,避難先として利用されています.地上から2階まで緩やかなスロープが設置されており,車椅子利用者や足腰に不安のある方など誰でもアクセス可能です. 

 

 西日本豪雨時には,アパート1階の天井まで浸水しました.スロープは,「これ以上の高さに逃げなければならない」といった当時の浸水の記憶を継承するとともに,浸水リスクと共存し,日常生活の中でも災害時の行動を想起させるグラデーションの役割を担っています.

 

 安全か危険かの2元論ではなく、危険であることを知り、安全と危険の間をつなぐ選択肢を日常空間の中にどれだけ多様に用意することができるのかが、不確実性の高い現代の環境におけるまちづくりには重要な視点でしょう。

 

 サツキPROJECTが広がっています!