ー2025年10月10日ー
はじめに
今回、外山は勤務終了後15時に3歳の長女を保育園(ぶどうのたね)にお迎えに行かなければならなかった。インタビューを始めたのがその20分ほど前。3歳の子が待ってるとなると無理も言えず、20分程度で終了。津田とのやりとりは短くなったが、今回は今回で貴重な話が聞けたと確信する。
津田
「じゃあ始めますけど少し説明するね。“ぶどうの家”のホームページに“スタッフ対談”というのがあるんよ。
それを見てもらえば良いんだけど、そこに外山さんも掲載させてもらいます。少し先になるけど、瀧本君や福本さんも近々に掲載されるから目を通してくれると嬉しいな。
で、元々は、対談は全員の職員さんと1人づつ、私が話をする時間を作りたいという気持ちから始まった企画です。
で、中には、日頃だったら私に言えない要望をこの場でガッチリ吐き出そうという人もいるし、全くありませんという人もいる。いろいろなんじゃけどな、要望があれば言ってもらえれば有難いなあ!
でもね、基本的には私が職員さんのことをもっと知りたいんだよね。そんな企画なんでよろしくお願いします。では自己紹介からね」
外山「外山知恵です」
津田「年齢、聞いて良いかな?」
外山「39歳になります」
津田「39? 若く見えるよなあ!」
外山「そうですか? ありがとうございます」
津田「元々ここに来たときに、面接時、お子さんを保育園で? とか希望してなかった?」
外山「うーんと? そうなんですよ。メインは子供の保育園探しでした。
仕事も辞めてましたから。で、仕事を探しているうちに、会社がやっている保育園もあるよね、ということに気付いたんです。そんなこんなで探してると、直ぐに、たまたまと言うと語弊がありますが“ぶどうの家”の求人にヒットして場所も船穂で近いこともあり応募したんです」
津田「そりゃあ、たまたまよなあ! 家はどこ?」
外山「玉島になります」
津田「それなら近い。20分くらい?」
外山「15分から20分程度ですね、車で。話は戻りますが、最初は保育園は保育園で探してたんですけど、しっくり来る所と出会えなかったんです。どうしようかなあ? と考えてるとき、ここに求人があって」
津田「保育園は入れたんかなあ?」
外山「保育園もたまたまなんですけれど、7月くらいだったかな? 、『これから入園してくるんですよ』ってことで時期も幸いしました」
津田「そりゃあ良かったね」
外山「そうなんですよ。ほんとに良かったです」
@この辺りから外山も緊張感が溶けたのか? 微笑みが多く見えてきた。
津田「子供さんは幾つだったの?」
外山「その頃は1歳半くらいかなあ?」
津田「2歳になる前?」
外山「はい、そうでした」
津田「じゃあ、保育園的にもOKだったんよね(保育園“ぶどうたね”は0歳児~2歳児を中心に19名定員)。良いご縁をいただきました。ありがとうございます。で、預けて、あのときは調理?」
外山「あのときは調理補助という求人内容でしたけど、面接に来て、調理補助をやりながら簡単な介護もしてもらうといことでした」
津田「働いてみてどうですか?」
外山「そうですねえ、かなり以前ですが接客業務をしてました。調理とかはしてませんでしたけれど、そこでの経験というか? いろんなところに気を配ったりしたことは今に役立っているかなあ! とは思います」
津田「働いてみて“楽しい”とか“やりがい”みたいのはある?」
外山「質問の趣旨とは違うかもしれないですけど、入院されてた方が帰ってきてくれたときなんかは嬉しい気持ちになります。食べられなかったAさんが次第に食べられるようになったときとか、段々打ち解けてBさんと冗談が言えるようになったり。こういう日々の出来事が、やりがいのような気がします」
津田「嬉しいよなぁ、人と人の関わり。最初は単なる利用者さんだったのが、ちゃんとAさんとかBさんという風に個人に変わってくるときがあるよ。そこからはググッと関係性が深まって」
外山「ただ、以前おられたCさんが退所されるときに皆で見送って、Cさんとは深く接してたので凄く悲しくなってしまったんです。すると管理者の原さんから『そこまでしないように』みたいな話があったんです。こういう経験は初めてだったので、施設ってこんなものなのかなあ? って思ったこともありました」
@ここだけの内容では話が見えてこないが、ここから深掘りしていく。
津田「そこまで、とは?」
外山「なんて言うんですかね? Cさんを送り出すときに感情が高まったというか? ホロっと涙する人も何人かいたんです。その涙を見て、娘さんが『他の所に行くのを止めようか?』って口にされたんですよ。そんな葛藤がご家族にはあるんですね。で、原さんの趣旨は『せっかく色々考えた末に新たな行き場所が見つかったのに、行くのを止めると本人とご家族にとっては負担も大きくなるから』とのことだったと理解しましたが、難しいなあ! と」
津田「家族も本人も新天地に向けて行こうとしてるのに、そんな風な最後になると、後ろ髪を引かれるような思いになるからということなんよな」
外山「確かに。そういう感情の線引きも必要なんだな、と勉強になりました」
津田「関係が深まると自然とそうなるんよ。Cさんの場合も、泣くのは私も悪くないと思う。だけど一言『向こうで幸せにね』とか言ってあげれば、それで充分だと思う」
@外山は頷くばかり
津田「ところで、子供さんは大きくなった?」
外山「今、3歳と2ヶ月くらいになりました」
津田「別の保育園へ?」
外山「まだ、ここの保育園にお世話になってます。今年度いっぱいで、来年から幼稚園です」
津田「幼稚園か。幼稚園なら延長がある所もあったりするからね。で、今は何時~何時まで勤務?」
外山「9時から15時です」
津田「そうすると幼稚園になっても大丈夫?」
外山「一応、預かりがある所を検討してるので、通常は14時までのところを1時間延長してお願いしようと考えてます」
津田「見つかりそう?」
外山「多分、大丈夫だとは思うんですけど?」
津田「良かった。是非、是非、続けて下さい。多分、介護って初めてだと思うけどすごく向いてると思う」
外山「そうですか? なんか、結構入りすぎると逆にイライラしちゃうんですけど、適当なところでラインを引くというのが出来ない性格なんです」
津田「でも、それは良いと思うよ。そんな一足飛びではいかない。利用者さんとの関係で、その人のことを凄く好きになるとか、そういう経験が大事だし、逆に凄く嫌いになるとかっていうのがあっても良いと思うんよ。
ただ、自分が、嫌いなんだとか辛いんだっていうのを、ちゃんと他のスタッフと共有できるかどうか?
これがすごい大事。嫌いなものを無理矢理、自分の気持ちに対して好きにならないといけないなどと思ったら、絶対に良好な関係は築けない。でも、他では好きな人もいる。とはいえ、外山さんが嫌いな人を他のスタッフが好きかもしれない。
いろんなスタッフがいて、いろんな利用者さんがいるのが良いんよ。
外山さんのように感情豊かという人は介護職に向いてると思ってる。そんな個性をしっかり発揮してくれたら嬉しいなあ」
野田→外山「管理者の原さんから『あまり感情的に入り込むな』と指導が?」
外山「私が、利用者さんの誰かが退所するという経験が初めてだったので、更には関係性が上手くいってたCさんだったということ。それに何人かで見送ったということもあり余計に感情が昂っちゃったんです」
津田「そのときの状況を私は見てないけど、『行かないで』とか『なんかあったら帰っておいでよ』とかね、本人とご家族が迷って出した答えに後悔するような声掛けはしないほうがいい。
だけど、寂しさを伝えること、敢えて“さみしげ”は隠す必要はないと思うよ。
人を相手にしてるんだから。前向きな言葉を送ったのに、相手は後向きな言葉と捉えられることだってあるし。
悔しい思いもするだろうけど、だからって感受性が強いことはとても素晴らしいことだと思うな」
野田「難しいところですねえ」
外山「うん うん うん」(頷くばかり)
津田「働いてまだ短いけど会社への要望とかある?」
外山「いいえ。今のところは特にありません」
津田「でも、何かあったとき、言える人はいる? 花帽子の中で」
外山「そうですね。原さんには話し掛けやすいかなあ」
津田「うん うん もう溜め込まずにしっかりと言うてよ。原くんでもいいし、私を捕まえて言ってくれても良いから。
溜め込まずに出す。
出せば自分も楽になるし、出したら自分だけじゃなくて他の人も同じように悩んでいたということもあるから、皆で考えた方が上手くいくんよ。
そんな出せる問題は建設的だと思うし。誰かの悪口とかは言えないけど、建設的なことはドンドンと言って欲しいな」
野田→外山「ストレスとかありますか?」
外山「仕事上ですよね。ないこともないですけど…… ちょっと自分と合わないかな? と感じるスタッフさんに何かを頼むときくらいですか? 私は介護員じゃないので補助的なことしかできませんから」
野田「微妙な立ち位置ですね」
津田「この際、介護福祉士を取ったら良いのに? でも、まだお子さんが小さいから勉強時間がないか?」
野田「国家資格とはいえ、合格率は高いし後々も便利じゃないですか?」
外山「いろんなことをするのも性に合ってるかなあ? と思ったりするんですけど、腰が弱いので利用者さんを持ち上げたりとかが難しいんです。『そこだけ出来ません』とも言えませんから。体力的にも自信が? 資格取得を考えたりもするんですが現実を考えると、なかなか…… 」
津田「腰を痛めないために勉強するのはありかも? じゃな」
野田→外山「長女さんが保育園を卒園されても、ここで続ける意思には変わりないんですね?」
外山「ハイ。今のところは」
津田「よろしくお願いします」
最後に
今回で12人の職員さんからインタビュー・聞き取りをしたことになるが、実働19分間という聞き取りではあったものの、19分間だけでも個性を感じさせてくれるものになったと思う。
世間では「人生いろいろ」と言われ語られるけれど「なるほどなあ!」と、聞き耳を立てながら納得させられることが多い。この企画が育児雑誌等で紹介されるモノなら、外山の母としての顔が見られるのだろうが、各職員さんの「いろいろ」を聞くことがとても楽しくなってきている。